なぜAdobeは競合のAIモデルを
Photoshopに統合したのか

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なぜAdobeは競合のAIモデルを<br>Photoshopに統合したのか

※本記事の情報は2025年12月〜2026年1月時点のものです。クレジット消費数やモデルのラインナップは頻繁に変更されるため、最新情報はAdobe公式ヘルプをご確認ください。

Adobeの戦略が変わりました。

2023年、Fireflyは「商用利用安全な純正AI」として登場しました。他社が著作権問題で揺れる中、ライセンス済みコンテンツのみで学習したFireflyは、Adobeの差別化戦略の柱でした。

しかし2025年、AdobeはFLUX、Nano Banana Pro、GPT Imageなど競合の画像生成モデルをPhotoshopやFireflyに統合。逆にChatGPTにはPhotoshop機能を提供するという、双方向の動きを見せています。

「最高のAIを作る会社」から「最高のAIを選べる場所を作る会社」へ。この転換は何を意味するのでしょうか。

この記事でわかること

  • Photoshopの生成塗りつぶし(Generative Fill)に統合された他社AIモデルの一覧
  • Adobeがプラットフォーム戦略に転換した背景
  • レタッチャーに求められる新しいスキル

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目次

Photoshopに統合された他社AIモデル一覧とクレジット消費についての解説

そもそも「生成クレジット」とは?サブスク料金だけでは使えないAI機能

Photoshopの生成AI機能を使うには、月額サブスクリプションとは別に「生成クレジット」が必要です。

Creative Cloudのプランに応じて毎月一定数のクレジットが付与されますが、生成塗りつぶしなどのAI機能を使うたびにクレジットが消費されます。付与されたクレジットを使い切ると、追加購入するか翌月まで待つ必要があります。

つまり、Photoshopのサブスク料金を払っていれば生成AI機能が無制限に使えるわけではありません。特に他社モデルはFireflyの10〜40倍のクレジットを消費するため、使用頻度によっては追加コストが発生する点に注意が必要です。

生成塗りつぶしで選べる5つのAIモデルとクレジット料金体系

Photoshopの生成塗りつぶし(Generative Fill)には、FLUX.2 pro、FLUX.1 Kontext [pro]、Nano Banana、Nano Banana Proが統合されました。

Photoshop 生成塗りつぶし(Generative Fill)統合モデル:

提供元モデルクレジット消費
AdobeFirefly Image Models1
GoogleNano Banana
(Gemini 2.5 Flash Image)
10
GoogleNano Banana Pro
(Gemini 3 Pro Image)
40
Black Forest LabsFLUX.1 Kontext [pro]10
Black Forest LabsFLUX.2 pro20

Photoshop その他の統合:
Generative Upscale:Topaz Gigapixel / Topaz Bloom
AI Sharpen / AI Denoise:Topaz Sharpen / Topaz Denoise

Fireflyアプリ(Text to Image、Boards等):
– OpenAI GPT Image、Google Imagen、Ideogram、FLUX1.1
– ※動画生成にはSora 2、Runway、Luma AI等も統合

このクレジット消費の差が重要です。Firefly(1クレジット)に対し、他社モデルは10〜40クレジット。高性能モデルを使うほどAdobeに収益が入る構造になっています。

参考:Adobe Help – Partner models in Adobe products

Adobeアプリを開かずにPhotoshop機能が使える:ChatGPTとの双方向統合

Adobe VP Deepa Subramaniam氏はCreative Bloqのインタビューでこう述べています。

「クリエイティビティのある場所に行く。それが自社のプラットフォームかどうかは関係ない」

PhotoshopのツールがChatGPT内で使えるようになったのは、この考えの表れです。ユーザーがChatGPTでアイデアを出し、そのままPhotoshopの機能で形にする。Adobeのアプリを開かなくても、Adobeの機能が使われる構図です。

参考:Creative Bloq – How Adobe thinks creatives will use AI in 2026

Project Graph:複数のAIモデルを自由に組み合わせるワークフロー基盤(近日リリース)

2025年11月のAdobe MAXで発表されたProject Graphは、この戦略の集大成と言えます。※現時点では発表のみで、近日リリース予定です。

ノードベースで複数のAIモデル、Adobeツール、エフェクトを自由に接続し、ワークフローを構築できる。作成したワークフローは「カプセル」として保存・共有・再利用可能になる予定です。

重要なのは、接続できるのがFireflyだけでなく、サードパーティのAIモデルも含まれる点です。

参考:Adobe Blog – Introducing Project Graph

Adobeが純正AI開発からプラットフォーム戦略に転換した3つの理由

理由1:Firefly単独では市場シェアを維持できないという現実

Fireflyは市場シェア29%でトップですが、MidJourney(19%)やCanva AI(16%)との差は圧倒的ではありません。

参考:Quantumrun – Adobe Firefly Statistics

各AIモデルには得意・不得意があります。Fireflyが苦手なスタイルでFLUXが強い場合、ユーザーは別のツールに流れます。それを防ぐには、Adobe内で選択肢を用意するしかない。

理由2:ユーザーを他社ツールに流出させないための囲い込み戦略

クリエイターが使うAIモデルが多様化する中、Adobeには2つの選択肢がありました。

1. 純正Fireflyの品質で勝負し続ける
2. 他社AIも使える「場所」を提供する

Adobeは後者を選びました。ユーザーがFLUXを使いたいなら、他のツールではなくPhotoshop内で使ってもらう。そうすればCreative Cloudの契約は維持されます。

理由3:AppleやGoogleと同じ「プラットフォームで場所を押さえる」戦略への転換

iPhoneは他社アプリを排除せず、App Storeという「場所」を提供しました。Googleも自社サービスだけでなく、Androidという「場所」で勝負しています。

Adobeも同じ道を歩み始めています。個別のAIモデルで勝負するのではなく、クリエイターが働く「場所」を押さえる戦略です。

Adobeのプラットフォーム戦略がクリエイティブ業界に与える3つの影響

影響1:「どのツールを使うか」から「どのプラットフォームで作業するか」への変化

従来、ソフトウェアベンダーは自社機能の囲い込みで勝負していました。Adobeの方針転換は、業界全体の流れを変える可能性があります。

クリエイターは「どのツールを使うか」ではなく「どのプラットフォームで作業するか」を選ぶようになるかもしれません。

影響2:好みのAIモデルを使いながらAdobeエコシステムに留まれる環境の実現

「Fireflyよりこっちのモデルの方がいい」という理由でAdobeを離れる必要がなくなります。

  • FLUXの画質が好き → Photoshop内で使える
  • GPT Imageの精度が必要 → Fireflyアプリ内で使える
  • ChatGPTでアイデアを出したい → Photoshop機能が統合されている

選択肢が増えるほど、Adobeエコシステムに留まる理由が増えます。

影響3:便利になるほど高まるAdobe依存リスクという諸刃の剣

ただし、これは諸刃の剣でもあります。

Project Graphがリリースされると、作成したワークフロー「カプセル」はAdobeエコシステム内でしか動きません。便利なカプセルを多く作るほど、他のプラットフォームへの移行コストは上がります。

「選択の自由」は、Adobeという枠の中での自由です。

AI時代にレタッチャーに求められる新しいスキルと変わらない価値

新スキル1:AIモデルごとの特性を理解し最適なモデルを選ぶ判断力

「Photoshopが使える」だけでは差別化になりにくくなります。

  • どのモデルがどんな用途に向いているか
  • クライアントの要望に応じてモデルを選べるか
  • 複数モデルを組み合わせたワークフローを構築できるか

こうした判断力が、次の差別化要因になりそうです。

新スキル2:複数のAIモデルを組み合わせた効率的なワークフロー構築力

Project Graphのようなツールが普及すれば、定型作業は「カプセル」で自動化されます。

残るのは「このクライアント、この案件に最適な組み合わせは何か」を判断する部分です。AIが増えるほど、組み合わせのバリエーションも増える。その選択眼が、プロとしての価値になります。

AIモデルがいくら増えても変わらない「人間にしかできない仕事」

AIモデルがいくら増えても、変わらないことがあります。

  • 「これでOK」と判断するのは人間
  • クライアントの意図を汲み取るのは人間
  • 最終的な品質責任を負うのは人間

実はAdobe自身も、この点を繰り返し強調しています。

2025年10月のAdobe MAXでは、こう宣言されました。

「テクノロジーは人間の創造性を増幅し、新たな可能性を開くでしょう。しかし、決して複製できないものがあります。それは、クリエイターの皆さんだけが作品にもたらす感情と人間性です」

参考:Adobe Blog – Creative innovations unveiled at Adobe MAX 2025

また、AdobeのAIソリューション・セキュリティ責任者Geoff Mroz氏はこう述べています。

「Adobeが『生産性』を語るとき、あなたを置き換えるという意味ではありません。私たちが話しているのは、他の誰も与えられないものを提供すること——それは『時間』です」

参考:Adobe Blog – Creative innovations unveiled at Adobe MAX 2025

Adobeの公式見解は明確です。「AIは人間の創造性を代替するものではなく、増幅するツールである」と。

Adobeのプラットフォーム戦略は、使えるツールを増やしてくれます。ただし「何をどう使うか」の判断は、依然としてレタッチャーの仕事です。

東京レタッチの見解:変化に追いつくための「余白」が必要な時代

生成AIの進化スピードは目覚ましく、Photoshopのアップデートによる新機能の追加も、すべてを追いかけるのは非常に難しくなってきたと感じています。

日々のレタッチ作業に追われて勉強の時間を確保できないレタッチャーは、今後厳しくなっていくかもしれません。新しいツールや機能が次々と登場する中で、「知らなかった」が致命的な差になる可能性があります。

レタッチ会社としては、黙々と作業をこなすレタッチャーだけでなく、あえて手隙の時間を作り、新しい情報や技術をキャッチアップする社員が必要になると考えています。全員が目先のレタッチ作業にだけ注力しているような体制では、変化への対応が遅れてしまいます。

なお、東京レタッチのサービス領域では、そこまで高度なクリエイティブを求められる案件は多くありません。そのため、現時点では生成クレジット消費の多いパートナーモデル(FLUX、Nano Banana Pro等)の使用は限定的です。ただし、今後クライアントの要望や業界の変化に応じて、活用の幅を広げていく可能性はあります。

まとめ:ツールは揃う、あとは使いこなすだけ

Adobeは「最高のAI」を作る競争から降りて、「最高のAIを選べる場所」を作る競争に参入しました。

FLUX、Nano Banana Pro、GPT Image——これらを全てAdobe製品内で使えるようにし、同時にChatGPTにPhotoshop機能を提供する。ユーザーがAdobeを離れる理由をなくしつつ、外部プラットフォームにも進出する戦略です。

レタッチャーにとって、これは選択肢の増加を意味します。同時に「複数のAIをどう使い分けるか」という新しいスキルが求められることも意味します。

ツールは揃う。あとは、どう使いこなすか。

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参考リンク

この記事を書いた人

玉上義彦

玉上義彦

株式会社bloom

フォトショップ歴20年。ベトナム在住歴8年。
早稲田大学卒業後、カメラマンアシスタント、雑誌編集者を経て、現職。
新規開拓営業、既存顧客対応、レタッチャーの養成およびマネジメント、SNS運用、ウェブコンテンツ制作などを担当。

よくあるご質問

生成クレジットとは何ですか?サブスク料金に含まれていますか?
生成クレジットは、Photoshopの生成塗りつぶしなどAI機能を使用するために必要なポイントです。Creative Cloudのプランに応じて毎月一定数が付与されますが、サブスク料金を払えば無制限に使えるわけではありません。クレジットを使い切った場合は追加購入が必要です。
Photoshopで使える他社AIモデルは何がありますか?
2025年12月時点で、生成塗りつぶし(Generative Fill)では以下のモデルが利用可能です。
・Google Nano Banana(Gemini 2.5 Flash Image)
・Google Nano Banana Pro(Gemini 3 Pro Image)
・Black Forest Labs FLUX.1 Kontext [pro]
・Black Forest Labs FLUX.2 pro
また、Generative UpscaleではTopaz Gigapixel / Bloom、AI Sharpen / DenoiseではTopaz Sharpen / Denoiseが統合されています。
他社モデルを使うとクレジット消費が増えますか?
はい。Fireflyモデルは1クレジットですが、他社モデルは10〜40クレジット消費します。Nano Banana Proは40クレジットと最も高額です。クレジット消費数は変更される場合があるため、最新情報はAdobe公式ヘルプをご確認ください。
Project Graphとは何ですか?
2025年11月のAdobe MAXで発表された、ノードベースのワークフロー構築ツールです。複数のAIモデルやAdobeツールを接続して自動化できる予定で、近日リリースが予定されています。
レタッチャーはAIモデルの使い分けを覚える必要がありますか?
今後は必要になると考えられます。各モデルには得意・不得意があり、用途に応じた選択が求められます。ただし、最終的な品質判断やクライアント意図の汲み取りは人間の仕事であり、その点は変わりません。