AI時代における
レタッチサービスの未来を展望する
BtoBフォトレタッチ会社の真価

昨今、AI技術の進化は目覚ましく、レタッチ業界にも大きな波が押し寄せています。従来の画像処理に加え、GoogleのNano Bananaに代表されるような高度な画像生成AI技術も登場し、バーチャル試着やモデル生成といった新しいアプローチが注目を集めています。
これらは一見、魔法のような効率化ツールに見えますが、私たちBtoBの現場から見ると、そこにはレタッチによる補正と、生成による創作の決定的な違いがあり、ビジネス利用においては看過できないリスクも存在します。
本コラムでは、AI時代において企業がレタッチ外注先を選定する際に知っておくべき見落とされがちなリスクと、プロフェッショナルなレタッチ会社が果たすべき真の役割について解説します。
- この記事を読んでほしいのはこんな人
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- フォトレタッチ会社の経営者・マネージャー層
- プロのレタッチャー及びフォトグラファー
- 自身で写真は撮影しないが、仕事で写真を扱う方
- レタッチ会社にレタッチを外注する企業の方
東京レタッチは、芸能人・エンターテインメント業界に特化したプロ品質の画像修正サービスです。
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フォトレタッチ業界における
AI導入の背景
フォトレタッチ業界が直面するAI時代の変化の背景には、Eコマース市場の拡大や企業におけるデジタル化の急速な進展に加え、エンターテイメント業界におけるコンテンツのデジタル配信への移行加速や、いわゆる「推し活」に代表されるファンダムの熱量が生み出す多種多様なプロダクト(グッズ、デジタルコンテンツ、写真集など)の著しい増加などがあります。
これら社会経済活動の変化に伴い、日々、膨大な量の画像が生成され、その効率的な処理と高品質な管理が求められています。特に、数千点にも及ぶ商品写真のレタッチや、芸能人の写真集・アーティストのコンサートグッズに使用される数百、数千枚の写真から最良のカットを選び出し、高いクオリティで仕上げる案件は、多くの企業にとって依然として重要な課題です。こうした中、AI(人工知能)による画像処理技術の目覚ましい進化により、これらの業務の効率化・自動化に大きな期待が寄せられています。
一方で、このAIによる効率化の波は一部ではコスト削減競争の激化や、サービス価格への値下げ圧力といった、業界にとって必ずしも楽観視できない側面をもたらすのではないかという懸念も存在します。しかし本コラムでは、AIによる生産性向上をそのような課題に短絡させるのではなく、むしろ昨今の人件費の上昇といった経営環境の変化にも対応しつつ、提供するサービスの質を一層高め、人間ならではの専門性を深化させるための貴重な機会として捉え直すことの重要性を提示したいと考えます。AI活用は、単にコストを削減するためのツールではなく、私たちフォトレタッチサービス提供者が、より本質的な価値提供に集中し、事業の持続可能性を高めるための戦略的手段となり得るのです。
AIによる効率化の恩恵と、
スキル不足が招く「コスト増」
AI技術の進化が、大量のフォトレタッチ案件の現場にもたらす恩恵は計り知れません。中でも、定型的な作業の自動化による生産性の向上は、大きな魅力と言えるでしょう。
例えば、Eコマース向けの商品写真の背景除去において、AIは単純な形状の商品や明確なコントラストを持つ画像の初期処理を自動化し、作業全体の初速を上げることに貢献します。大量の画像に対して一括で背景除去の下処理を行うことで、その後の人間による作業時間を短縮する効果も期待されます。
芸能人の写真集やアーティストグッズに使用される写真の場合も、ごく簡単なレベルの美肌補正のような初期処理で貢献できる可能性があります。これにより、レタッチャーはより高度な作業に早期に着手できるというメリットがあります。
しかし、その可能性に期待が集まる一方で、現状のAI技術だけでは対応しきれない現実的な限界も存在します。特にECサイトで実際に使用可能なレベル、つまり商品の魅力を損なわず、かつ購入者の信頼を得られるレベルの品質をAIだけで担保することは、依然として容易ではありません。
多くの企業がコスト削減のためにAIツールの自社導入を検討されています。しかし、実際に運用を始めると、AIが一瞬で処理した出力結果は決して完璧ではないという現実に直面します。
お客様が商品を拡大して見た際や、実物を手にした時に写真と違う、あるいは安っぽいと失望させてしまうような、質感の喪失や細部の歪みが頻発するためです。これらを見つけ出し、商品価値を損なわない状態へ修正するためには、結局のところ検品と修正という終わりのない作業に追われ、高度なレタッチ技術と相応のチェック時間が不可欠となるのです。
さらに深刻なのが、AIで途中までやったので仕上げだけプロに頼みたいというケースです。実は、AIが破壊してしまった画質やディテール、例えばノイズや不自然な質感を後から修復するのは、ゼロから作業するよりも遥かに困難です。
結果として、ベースデータの品質責任が持てないという理由で多くの制作会社から断られるか、最初からレタッチのやり直しになり、想定以上のコストと時間がかかってしまう事例が後を絶ちません。
安く済ませるつもりがかえって高くついたという事態を避けるためにも、最初から責任を持って完遂できるプロへの依頼が、結果として最も高い費用対効果を生むのです。
生成AIのリスク
本人らしさと商品価値の喪失
Nano Bananaのような生成AI技術は、元画像を参照して新しい画像を作り出します。これは架空のイメージビジュアル作成や、広告のコンセプトアートといったゼロから作り出す用途には強力ですが、本人らしさの維持が求められる芸能人の写真や商品写真ではリスクとなります。
・人物写真
AIは学習データにある理想の顔に近づけようとするため、シワや質感を消すだけでなく、目や輪郭の形まで補正してしまい、タレントやモデルの本人らしさを奪って別人のように変えてしまうことがあります。
・商品写真
ブランド独自の正確な色味や、素材のテクスチャが、AIの生成プロセスによって全く別のものに置き換わってしまうことがあります。
ビジネスにおいて信頼は細部に宿ります。実物と異なる写真を写真集やグッズ、SNSなどに掲載・使用することは、顧客やファンへの裏切り行為になりかねません。だからこそ、AIの画一的な処理ではなく、プロの目による適度で自然な調整が不可欠なのです。
AIには真似できない人間の専門性と品質管理
BtoBフォトレタッチサービスにおいて、AIには代替できない価値の出発点となるのが、クライアントとの的確なコミュニケーションを通じたヒアリングと提案能力です。
多くの場合、クライアントがフォトレタッチに関する十分な専門知識を持っているとは限りません。入社まもない新入社員の方や、他部署からの異動、あるいは体系的なトレーニングを受けていないため知識が不足している方も多くいらっしゃいます。そのため、期待する結果を得るための具体的な依頼方法が分からなかったり、提供データのサイズや画質が不十分だったりすることも少なくありません。
潜在的な課題を見抜くヒアリング力
このような状況において、レタッチャーのヒアリングは単に作業指示を確認するだけに留まりません。クライアントの曖昧な要望や言葉の端々から真の目的を汲み取り、専門家の視点で実現可能性を判断し、時にはクライアント自身も気づいていない課題や代替案を提示することが求められます。
例えば、この画像を高解像度で印刷に使いたいというご要望に対し、元データの解像度が不足していればそのリスクを説明し、別の画像の使用や仕上がりレベルの調整を協議します。あるいはタレントのポートレートにおいて、フォトグラファーの意図したライティングと異なる修正指示があった場合、仕上がりが不自然になるリスクを助言することもあります。
AIは明確な指示に基づいて処理を行いますが、その指示自体をクライアントと共に具体化し、最適化していくプロセスは、人間の深い洞察力とコミュニケーション能力があって初めて成り立ちます。
最終関門としてのプロの技術
AIによる自動処理後の成果物をプロの目で厳しくチェックし、機械的な処理だけではカバーしきれない細部の違和感を丁寧に修正する、いわば最終関門としての役割も極めて重要です。
ECサイトの商品画像では、商品の素材感やディテールを正確に伝えつつ、自然に切り抜かれた高品質な画像へ仕上げる技術が欠かせません。商品の形を整え、自然な影を残し、微細なゴミを除去するといった配慮は、消費者に商品の価値を正しく伝えるために人間が担うべき責任です。
また、芸能人の写真集やアーティストグッズの写真においても、極めて高い完成度と被写体の個性を尊重したレタッチが求められます。人物の場合は美しさと自然さの絶妙なバランス、そして何よりもその人物の個性を損なわず、むしろ輝きを増すような配慮が必要不可欠です。
柔軟な課題解決力
クライアントの事業プロセスや画像の具体的な使用目的を理解しているからこそ、言葉の裏にある真のニーズを把握し、それに応じた提案が可能になります。
ライブステージのような激しい照明やスモーク、あるいは衣装やマイクが顔と複雑に重なっている写真など、AIが「何が写っているのか」を正しく認識できずに誤った修正をしてしまう難易度の高い画像に対しても、経験豊かなスタッフが最適な解決策を導き出します。
また、個別のクリエイティブな指示に対しても柔軟に対応します。これは、過去のデータを元に正解を探すAIには困難な、人間ならではの判断力と応用力の表れと言えるでしょう。
独自開発AIの落とし穴とセキュリティリスク
品質やコストの問題に加え、もう一つ忘れてはならない重大なリスクがセキュリティと権利関係です。
一部のレタッチ業者は独自開発のAIを使用と謳い、技術力をアピールすることがあります。しかし、世界的なテック企業ではない小さな会社が、AdobeやGoogleのような高精度なAIモデルをゼロから構築することは極めて困難です。
独自開発の実態がブラックボックス化している場合、以下のような重大なリスクが懸念されます。
・学習データの出所不明
ネット上の画像を無断収集(スクレイピング)して学習させている可能性があり、間接的に権利侵害に加担する恐れがある。
・データの流用
顧客から預かったデータを自社AIの学習データとして再利用する規約になっていたり、あるいはプライバシーポリシー等に「学習に使用しない」と明記されていなかったりする場合がある(情報漏洩リスク)。
特にコンプライアンスが重視される昨今、タレントの肖像や未発表製品のデータを、中身の不透明なツールや業者に渡すことはお勧めできません。
私たちプロフェッショナルなレタッチ会社は、Adobe Photoshop (Firefly) のような権利関係がクリアで、学習データに利用されない安全な環境のみを厳選して導入しています。
結論
AI時代だからこそ求められる責任ある品質
AIは素晴らしいツールですが、それは使い手がそのリスクと特性を完全に理解し、制御できている場合に限ります。
コスト、品質、そしてセキュリティ。これら全ての観点において、AI任せにするのではなく、AIを使いこなすプロをパートナーに選ぶことが、貴社のブランドと信頼を守るための最良の選択肢となるはずです。
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この記事を書いた人
よくあるご質問
- AIレタッチ技術だけで、商用レベルの品質は担保できますか?
- 現状のAIレタッチだけでは困難ですし、生成AIによる画像作成もそのままでは商用レベルに達しません。
まず、一般的な「AIレタッチ」はデータを元に画像を補正しますが、商品の正確な色や形状、ブランド独自の基準までは完全に理解できません。
また、昨今話題の「Nano Banana」のような画像生成AI技術は、元画像を参照して「全く新しい画像を生成」するものであり、厳密にはレタッチではありません。これらは便利ですが、生成の過程で人物の「本人らしさ」や商品のディテールが別物に置き換わってしまうリスクが非常に高いです。
AI特有の歪みや誤認識がクレームに繋がるリスクがある以上、ビジネスでの利用には最終的にプロの目による品質管理と仕上げが不可欠です。 - 大量の商品画像を、自分でAIツールを使って効率よく処理したいのですが。
- ご自身での運用は、「検品・修正」に膨大な時間を取られる上、最終的な解決が困難になるリスクがあります。
AIの出力結果にはハルシネーション(不自然な生成)や細部の破綻がつきものです。これらを見つけた際、修正するには高度なレタッチ技術が必要になるケースがほとんどで、専門知識がないと直せません。「品質が低くても構わない」という用途であれば別ですが、商用レベルを維持しようとすると、結局プロの手が必要になります。ご自身がレタッチャーか、貴社内にレタッチャーがいらっしゃれば効率化を図れると思います。
また、ご注意いただきたいのが、「自社でAI処理を行い、うまくいかなかった箇所の修正だけを外注したい」というご依頼は、多くの制作会社で引き受け手がいません。
なぜなら、AIで処理された画像は一見きれいに見えても、拡大すると画質が荒れていたり、修復困難なノイズ(アーティファクト)が混じっていたりすることがあるからです。土台となるデータの品質が崩れていると、プロがどれだけ手を加えても違和感を完全に消すことは難しく、最終的な仕上がりを保証できません。 そのため、中途半端な状態からの引き継ぎはお断りせざるを得ないのが実情です。
弊社にご依頼いただければ、最初から責任を持って作成し、「検品・修正済み」の安心できるデータを納品いたします。 手戻りのリスクを避け、最初から確実な品質を手に入れていただけます。 - アプリ等の自動AIレタッチでは、人物の顔が「別人」のようになってしまいます。
- 多くの自動AIツールは、補正ではなく「顔のパーツを作り変える(生成する)」処理を行ってしまうためです。
一般的な自動AIレタッチは、シワや肌の質感を過剰に除去するだけでなく、目や輪郭の形までAIが学習した「理想の顔」に近づけようとするため、ご本人とは違う顔になってしまいがちです。
特にタレント活動やブランディングにおいて、宣材写真や作品とご本人の実像が大きく乖離することは、ファンの方々に違和感を与えたり、本来の個性を損なったりするリスクに繋がりかねません。弊社では「本人らしさ」を最優先し、肌の質感や本来の顔立ちを活かした、プロによる「適度で自然な」調整を行います。 - AIを活用することで、レタッチ費用を大幅に安くできますか?
- 単純なコストダウンだけを目的にすると、かえって割高になるリスクがあります。
AIは「背景切り抜き」などの定型作業の効率化には寄与し、その分コストを抑えられる可能性はあります。しかし、前述の通り「検品・仕上げ」の工程は人間が行う必要があるため、劇的な価格破壊が起きるわけではありません。
無理にAIだけで安く済ませようとすると、期待した品質にならず、結局プロに一から依頼し直すことになり(二度手間)、当初の予算以上のコストがかかってしまうケースが多く見られます。
弊社では、AIの効率性と人の技術をバランス良く組み合わせ、**「ご予算内で最大限のクオリティと費用対効果」**を実現するプランをご提案します。 - 預けた画像データが、AIの学習に勝手に使われる心配はありませんか?
- 使用するAIツールによってリスクが異なります。
例えば、Photoshopのような大手ソフトウェアは「ユーザーの画像を学習に使わない」と明言しており安全性が高いですが、Web上で完結する無料ツールや一部の新興AIソフトの中には、規約で「サービス向上のため画像を解析・学習する」と定めているものが多く存在します。
特にタレント様や未発表製品の画像を安易にこれらのツールに通すことは、肖像権や機密保持の観点から大きなリスクとなります。
弊社では、学習データへの利用が行われない安全な環境とツールのみを選定して作業を行っておりますので、安心してご依頼ください。 - 「独自開発のAI」を使用している会社の方が、技術力が高いのでしょうか?
- 必ずしもそうとは言えず、むしろ権利面やセキュリティ面で重大なリスクがあります。
世界的なテック企業ではない一制作会社がゼロからAIモデルを構築することは極めて困難です。そのため「独自開発」と謳われていても、実際には学習データの出所が不明瞭であったり(無断収集された画像の利用など)、セキュリティポリシーが曖昧であったりするケースが少なくありません。
特にコンプライアンスが重視される昨今、AIの中身が「ブラックボックス」であることは、発注者様にとっても潜在的なリスクとなります。そのようなレタッチ業者に大切なデータを渡すことはお勧めできません。






