画像の解像度とデータサイズ
【初心者向け】超入門ガイド

「L版ブロマイドにプリントする際に必要なピクセルサイズは?」
「ppiとdpiの違いがわからない…」
「カメラマンから納品された雑誌表紙用データのサイズが小さいように感じる…」
業務で画像ファイルを扱う際、これらの疑問に直面することがあるかもしれません。専門的な知識や十分な指導がない場合、対応に迷う場面も考えられます。
本記事では、写真撮影を専門としないものの、業務で画像を扱う必要がある方々を対象に、解像度の基礎知識から、ウェブサイトや印刷物における適切な利用方法までを平易に解説します。
本記事を通じて、解像度やデータサイズに関する理解を深め、自信を持って画像ファイルを取り扱えるようになることを目指します。
- この記事を読んでほしいのはこんな人
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- 自身で写真は撮影しないが、業務で写真を扱う方
- レタッチ会社にレタッチを外注する方
- 印刷会社に写真を入稿する方
- 企業のウェブ担当者、SNS担当者
- 経験の浅いデザイナーやレタッチャー
- カメラマンで、自身の写真をどの程度のサイズで納品すべきかわからない方
まずは基本から
解像度、ピクセル、ppi、dpiとは何か
画像ファイルを取り扱う上で不可欠なのが「解像度」という用語です。「画質に関連するもの」という程度の認識の方もいるかもしれません。
解像度とは、端的に言えば、デジタル画像がどの程度「鮮明」であるか、「きめ細かい」かを示す度合いです。
この解像度が高いほど、画像はより多くの情報を保持し、細部までクリアで滑らかな表現が可能になります。逆に解像度が低い場合、画像は粗く、不鮮明な印象を与えます。
この解像度を理解する上で重要となるのが、次に解説する「ピクセル」「ppi」「dpi」といった単位です。まずはこれらの基本要素から見ていきましょう。
・ピクセル (Pixel):デジタル画像の構成単位
ピクセルとは、デジタル画像を拡大表示した際に見える、画像を構成する最小の四角い点のことです。
重要なのは「ピクセルサイズ」です。画像の「寸法」を示す際、「1200 x 800ピクセル」のように表現されます。これは画像の横方向に1200個、縦方向に800個のピクセルが配置されていることを意味します。このピクセルサイズ(総ピクセル数)が、画像の実際のデータ量であり、表示される際の画質に大きく影響します。 例えばウェブサイトでは、このピクセルサイズがページの表示速度にも関連するため、特に適切な管理が求められます。
・ppi (Pixels Per Inch):画像の密度を表す単位
ppiとは、「Pixels Per Inch」の略称で、1インチ(約2.54cm)あたりに含まれるピクセル数を示す「密度」の単位です。
これは主に、画像を印刷する際にどの程度の大きさで出力されるかの目安となります。ppi値が高いほど、ピクセルが高密度に配置されていることを示します。
かつて「ウェブサイト用画像は72 ppi」と言われていましたが、現在のウェブ環境ではこの値を強く意識する必要性は薄れています。ウェブサイトにおいては、画像のピクセルサイズ(例:1200 x 800ピクセル)の方がはるかに重要視されます。
ウェブサイトでは、ブラウザが画像のピクセル数を直接参照して表示するため、ppi設定は表示サイズに影響しません。また、ページの表示速度に関わるファイルサイズも、主にピクセル数で決まります。そのため、ppiよりもピクセル数の適切な管理が重要となるのです。
・dpi (Dots Per Inch):印刷の精細度を表す単位
dpiとは、「Dots Per Inch」の略称で、プリンターが紙へ印刷を行う際に、1インチあたりに打つことができるインクの点(ドット)の数を示す単位です。
これは主にプリンターや印刷機の性能に関連する指標であり、通常は印刷会社が管理する項目です。画像ファイルを用意する際は、基本的にppiを意識すれば問題ありません。
・ppiとdpiの違い
ppi → デジタル画像に関する指標(ファイルや画面上のピクセル密度)
dpi → 印刷に関する指標(プリンターのインクドット密度)
ただし、実際の制作現場ではこれらが混同して使用される場合も見られます。
ウェブサイトで画像を使うときの考え方
ウェブサイト(ホームページ、ブログ、SNSなど)で画像を使用する場合、印刷物とは異なる考慮点があります。
最優先事項は「ピクセルサイズ」です。
ウェブサイトでは、画像のピクセルサイズ(横〇〇ピクセル × 縦〇〇ピクセル)が最も重要です。これは、PCやスマートフォンのディスプレイが、指定されたピクセル数に基づいて画像を表示するためです。ファイルに設定されているppi値の重要度は比較的低いです。
【目安】ウェブサイトで一般的に使用される画像のピクセルサイズ
メイン画像(画面幅全体に表示する場合): 横幅 1920~2560ピクセル程度
記事中の画像: 横幅 800~1200ピクセル程度
小さなアイコンやサムネイル: より小さいサイズ
留意点:必要以上に大きな画像ファイルは、ウェブページの表示速度低下を招くため避けるべきです。画質に大きな差がなくとも、データ容量のみが増加する可能性があります。
ウェブサイト用の写真は比較的小さなサイズで十分ですが、レタッチ後に使用する場合は、実際の使用サイズよりも大きなサイズでレタッチ作業を行うことが望ましいでしょう。
2000×3000ピクセル程度のデータをレタッチャーに渡し、レタッチ完了後、ウェブサイト実装担当者によって適切なサイズに調整するのが最適な手順です。
印刷物で画像を使うときの考え方
チラシ、パンフレット、ポスターなど、紙媒体に印刷する場合は、ウェブとは異なる基準が存在します。
基本は「350dpi」です。
手元で確認する印刷物(チラシ、パンフレット、名刺、写真など)に使用する画像は、350dpiで用意するのが一般的な基準とされています。
350dpiが推奨される理由
この程度の密度があれば、通常の視認距離において画像の粒子感が目立たず、滑らかで高品質な印刷結果が得られるためです。
全てのケースで350dpiが必須というわけではありません。特に大判印刷物の場合、データ容量の肥大化を防ぐため、視認距離を考慮して適切なdpiを選択することが推奨されます。
「視認距離」によって必要なdpiは変動します。
これが重要な要素となります。印刷物は、視認距離が遠くなるほど、より低いdpiでも問題ないとされる傾向があります。
例:
ポスター(ある程度離れて見る場合): 150~200dpi程度でも許容されることが多い。
屋外の大型看板(遠距離から見る場合): さらに低いdpi(例:50dpi)でも十分な場合がある。
【補足情報】 印刷ではインクの微細な「点(網点)」で色彩を表現します。この網点の細かさを示す指標が「スクリーン線数(lpi = Lines Per Inch)」であり、一般的なカラー印刷では175lpiが多用されます。画像を高品質に印刷するためには、画像の解像度(ppi)をスクリーン線数(lpi)の約2倍に設定することが望ましいとされています。
計算上、175 lpi × 2 = 350 ppi となります。これが「350dpi(ppi)」が推奨される理由の一つです。300ppiでも多くの場合、十分な品質が得られますが、最終的には印刷会社の指定を確認することが最も確実です。
印刷サイズに必要なピクセル数は?
「A4サイズで350dpiの印刷を行いたいが、必要な画像のピクセル数はいくつか」という疑問は、簡単な計算で解決できます。
計算式:
必要なピクセル数 = 印刷したいサイズ (インチ) × 目標dpi
例:A4サイズ(約 8.27 x 11.69 インチ)を350dpiで印刷する場合
横:8.27インチ × 350 dpi ≒ 2894ピクセル
縦:11.69インチ × 350 dpi ≒ 4093ピクセル
→ 約 2895 x 4092 ピクセルの画像が必要となります。(計算例)
逆に、手元の画像のピクセル寸法から、350dpiでどの程度のサイズに印刷可能かを算出することもできます。
ピクセル数の計算が面倒な方へ
必要なピクセル数の計算の計算が面倒だと思われる方は、以下のURLをブックマークしてご活用ください。
印刷したいサイズから、必要なピクセル数を自動で計算できます。
https://retouch.tokyo/data-size/
印刷用のファイル形式
印刷会社へ入稿する際には、以下のようなファイル形式が一般的に使用されます。
TIFF (.tif)
高画質であり、画質劣化がない(可逆圧縮)ため、写真やアート作品などの印刷に適しています。
弊社では、雑誌の表紙、写真集、ポスター、壁掛けカレンダーなど、A4以上のサイズに印刷する場合には、TIFF形式での入稿を推奨します。
JPEG (.jpg)
高画質設定で保存されていれば、写真印刷にも十分使用可能です。
L版や2L版の生写真、アクリルスタンド、缶バッジなどには、JPEG形式での入稿を推奨します。
弊社の場合、TIFFとJPEGでレタッチ料金が異なり、データサイズの大きなTIFFの方が高額に設定されています。より高画質なデータが要求される用途には、料金が高くてもTIFF形式を、ウェブサイトや比較的小さなサイズの印刷物には、料金を抑えられるJPEG形式を選択するとよいでしょう。
まとめ:これだけ押さえれば大丈夫!
画像解像度に関する解説は以上です。
内容が複雑で理解が難しいと感じる場合は、以下の3点を主要なポイントとして把握しておけば、多くの状況に対応可能です。
・A4以上のサイズで印刷する場合
カメラで撮影可能な最大サイズのTIFFデータでレタッチ作業を行い、印刷所に入稿します。
・A4未満のサイズで印刷する場合
3000×4000ピクセル程度のJPEGデータで十分です。ただし、保存時には圧縮率を低く抑え、高画質で保存することが重要です。
・ウェブサイトのみで使用する場合
2000×3000ピクセル程度でレタッチ作業を行った後、ウェブ制作担当者にデータを渡し、該当サイトに適したサイズに調整して実装してもらいましょう。
ウェブサイト用なのに、大は小を兼ねると考えて大きなTIFFデータで納品するカメラマンが時々いらっしゃいますが、これは避けましょう。TIFFはウェブ表示に標準的なフォーマットではないため、ウェブ制作担当者が適切なフォーマットに変換し、さらにリサイズする追加作業が必要になるからです。レタッチする時もJPEGよりTIFFの方が時間とコストが余計にかかります。ウェブ用途では、初めから軽いJPEGで使用サイズに近いデータを受け渡すことが効率的な進行に繋がります。
【補足】Photoshopの「生成アップスケール」について
画像解像度の基本を理解した上で、知っておいていただきたい新しい技術があります。
2024年10月29日にアップデートされたPhotoshopにおいて、「生成アップスケール」という機能が搭載されました。これはAI技術を用いて、小さな画像を大きなサイズに拡大できる機能です。
生成アップスケールで利用可能なモデル
現在、3つのモデルが利用可能です:
■ Firefly(Adobe純正モデル)
・Adobeが提供するモデルのため、使用回数の制限が比較的緩やか
・ただし、拡大処理により元画像から色味が変化する傾向がある
■ Topaz Gigapixel
・3つの中では比較的自然な仕上がり
・シャープネスがやや強めにかかる印象
・パートナーモデルのため、無料で使用できる回数は限定的で、継続利用には課金が必要
■ Topaz Bloom
・形状やディテールが元画像から変化しやすい
・パートナーモデルのため、継続利用には課金が必要
プロフェッショナルとして押さえておくべき重要なポイント
便利な機能ではありますが、業務で使用する際には慎重な判断が求められます。
まず確認すべきこと:
クライアントやカメラマンから小さなサイズの画像データを受け取った場合、まずは「より大きなサイズのデータがないか」を確認することが基本です。
生成アップスケールの限界:
どのモデルを使用しても、AIによる拡大処理では元画像から何らかの変化が生じます。色味、ディテール、シャープネスなど、オリジナルデータとは異なる仕上がりになる可能性があります。
特に人物写真においては注意が必要です。 目鼻立ちや表情が微妙に変わってしまうことがあり、本人の印象が損なわれるリスクがあります。アイドルや芸能人などの人物写真を扱う場合は、より一層の慎重さが求められます。
勝手な判断は避けましょう:
クライアントに確認せず、独断で生成アップスケールを使用して納品することは推奨できません。元画像の品質を損なうリスクがあるためです。
適切な使用場面
生成アップスケールは、以下のような場面で選択肢の一つとなります。
・どうしても大きなサイズのデータが入手できない場合
・クライアントが事情を理解し、承諾している場合
・緊急性が高く、他に選択肢がない場合
ただし、これらの場合でも、クライアントに対して「AI拡大処理を使用すること」「元画像から変化が生じる可能性があること」を事前に説明し、了承を得ることが重要です。
まとめ
技術の進歩により、かつては不可能だったことが可能になりつつあります。しかし、プロフェッショナルとして大切なのは、新しい技術を理解しつつも、クライアントとの信頼関係を第一に考えた判断をすることです。
画像サイズに関する疑問が生じた際は、まず適切なコミュニケーションを取ることを心がけましょう。
複雑な写真・画像データのお悩みを相談したい方へ
ここまで画像の解像度やデータ形式について解説してきましたが、こうした専門的な作業をプロに任せたいと考える方もいらっしゃるでしょう。以下の記事では、レタッチを外注する際の費用感や、失敗しないための依頼のコツについて詳しく解説しています。
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この記事を書いた人
よくあるご質問
- 画像の「データサイズ」(MBやKB)は、何によって決まるのですか?
- 画像のデータサイズ(ファイル容量)は、主に以下の2つの要素で決まります。
1.ピクセル数(画像の縦と横の画素数):
画像が持つピクセル数が多いほど、情報量が増えるためデータサイズは大きくなります。例えば、6000 × 4000ピクセルの写真は、ピクセル数が多いために容量が大きくなります。
2.保存形式(圧縮の度合い):
同じピクセル数の画像でも、どのようなファイル形式で保存するかによってデータサイズが大きく異なります。
・非圧縮形式(例:TIFF)は、情報がそのまま保存されるためデータサイズが重くなります。
・圧縮形式(例:JPEG)は、データの一部を省略することでデータサイズを軽くします。
・JPEG形式のように圧縮率を設定できる場合、高画質(低圧縮)設定で保存すれば、データサイズはさらに大きくなります。
- 写真の「大きさ」には様々な指標がありますが、どのように使い分ければ良いですか?
- 写真の「大きさ」には主に3つの異なる指標があり、用途に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
・ピクセルサイズ
例:6000 × 4000 ピクセル
画質(鮮明さ)を決める数量指標です。Webサイトに表示する際の大きさや、印刷時の品質を判断する基準となります。
・データサイズ(容量)
例:10MB(メガバイト)
ファイルの重さを示し、PCやサーバーのストレージ容量、Webサイトの表示速度に直接影響を与えます。
・印刷サイズ
例:A4、L判
印刷したときの実物(紙)の大きさを示します。
これらの指標は、「解像度(dpi/ppi)」によって相互に関係しています。 - 印刷用に必要な解像度はどれくらいですか?
- 手元で近くから見る印刷物、例えば、アイドルの生写真、チラシ、写真集などにおいては、一般的に350dpi(ppi)が高品質を保つための推奨基準値とされています。
このdpi(ppi)の基準に対して、印刷に必要なピクセル数(寸法)が十分確保されていることが、綺麗に印刷できるための重要な条件となります。
- 「2L判」(127 × 178 mm)を350dpiで印刷するには、何ピクセル必要ですか?
- 印刷品質の基準である350dpiを満たすために必要なピクセル数は、以下の計算式に基づいて求められます。
必要なピクセル数 = 印刷サイズ(インチ)× 解像度(dpi)
「2L判」のサイズをインチに換算すると「約 5インチ × 7インチ」になります。
この値を上記の計算式に当てはめると、必要なピクセル数は以下の通り計算できます。
・短辺:5インチ × 350dpi = 1750ピクセル
・長辺:7インチ × 350dpi = 2450ピクセル
したがって、約 1750 × 2450 ピクセル以上の画像データを用意すれば、2L判サイズで高品質な印刷が可能です。






